ひとりぼっちの上司と私

 転職してからだいぶマシにはなったが、いざ寝ようとすると翌日の仕事が気になって、頭にいくつかの心配事が浮かぶ。

 今俺が会社で一番気にかけていることと言えば、一年前に中途入社で商品企画部に入った女性社員、加納莉々のことだった。

 彼女の日頃の様子を見る限り、部の同僚たちとあまり馴染めていないようで、休憩中もひとりでいるのをよく見かける。

 職場は学校ではないのだから、仕事さえちゃんとすれば必要以上に同僚と親しくする必要はないのだが、それでも彼女は孤立しすぎていないだろうか。

 タイニーポケットが作っている商品は、決して堅苦しい会議の中から生まれるものではない。

 流行に敏感な商品企画部の社員たちが自由な雰囲気の中で意見を交わすからこそ、多くの人の興味を誘うヒット商品が作れるのだ。

 だが、ミーティング中の加納は、いつも端で議事録係のようなことをしてばかり。

 さらに、彼女が遠く離れた富山から上京してきた地方出身者であることも気になっている。

 仕事の悩みや愚痴を気軽に相談できる友達、あるいは恋人などがそばにいればいいが、あまりそんな雰囲気も感じない。

 職場で孤立することは、本人が思うより心身に悪影響だ。

 身をもってそれを理解している俺としては、どうにか彼女の助けになりたいのだが、職場では恐ろしい上司だと思われているため、どうにもうまくいかないのが現状だ。

 ヤスダを助けてくれたユリコさんのように、困っている人に優しく、しかしさりげなく手を差し伸べるにはどうしたらいいのだろう。

 答えの出ない問いを頭の中で繰り返すうち、俺は眠りに落ちていた。

< 35 / 205 >

この作品をシェア

pagetop