ひとりぼっちの上司と私

「だからね、加納さん。僕が言いたいのは、こう……心ときめく仕掛けというか、ガチャを回した人々がきみという企画担当者に、思わず『ありがとう』と伝えたくなるような、唯一無二の――」

 翌日、用があり社長室を訪れた俺は、歌代社長が加納を困らせている現場に遭遇した。

 社長自らが彼女に担当を任せた企画の件だとは思うが、加納の表情から察するに、彼の言いたいことの半分も伝わっているかどうか怪しい。

 一週間ほど前も、目の前の事務仕事から逃げて退社時間を過ぎた商品開発部に押しかけ、たまたま居合わせただけであろう加納を無理やり話し相手にしていた社長の姿を見たばかり。

 さすがに助け舟を出さずにはいられなくて、俺はふたりのいる応接スペースに近づいていき、社長の隣にどかりと腰を下ろす。

「社長、もう少しわかりやすく説明してやってください。彼女、困惑を絵に描いたような顔をしています」
「い、いえっ。私はそんな……っ」
「そうか、ごめん加納さん。僕は、頭の中のイメージを言語化するのがめっぽう苦手なくせに、話し出すとなかなか止まれなくて。今の話の中で、具体的にどこを詳しく説明してほしい?」

 社長という立場の歌代さんだが、偉ぶったところが全くないうえ、基本的に人に指摘されたことは素直に受け入れるタイプである。

 たまにワガママが発動する時もあるが、前の会社で感じていた重圧に比べたら、なんてことはない。この人のもとで働けることは、幸運だと思う。

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