ひとりぼっちの上司と私
柄にもなく胸が弾んでいるのを感じ、やはりこれは俺の唯一の趣味と言っていいだろう、と思う。
とくに目的もなく歩き始めたのだが、なんとなく、前回ユリコさんと一緒に釣りをした波止場へ向かう。今度は、前回より大きなマグロを狙ってみるのもおもしろいかもしれない。
海沿いを歩くと、消波ブロックの積み重なった波止場が見えてくる。誰でも交流できるエリアなので先約が何人かいて、釣りをしたり語り合ったりしている。
会話の内容は当人同士にしか表示されないため、プライバシーは守られる仕様だ。
「ん? ……ユリコさん?」
俺は目を細め、画面を凝視する。
灯台のそばで、ユリコさんと思われるアバターが、ピンク色の髪をした別の女性アバターと釣りをしていた。
思わず、少し離れた場所で足を止め、ふたりの様子を見る。ユリコさんではない方の女性の釣り竿がしなった。海の中から勢いよく現れたのは、俺が先日釣ったものより大きく見えるマグロだ。
ユリコさんが、俺にしてくれたのと同じ拍手の仕草で隣の女性を讃える。
楽しそうなその姿に、胸の辺りがもやついてくる。
……またか。いくらなんでも独りよがりがすぎるだろう。
ゲームの中で唯一親しいプレイヤーが、他のプレイヤーとも交流している姿を見ただけで、軽く傷つくなんて。