ひとりぼっちの上司と私

 彼がボタンを押してエレベーターを待っている間に、私もその背中に追いつく。

 ふたりでエレベーターに乗るのは緊張するので、少しは空気を和やかにしておきたくて、自分から挨拶する。

「お疲れ様です。これから取引先ですか?」

 私たち一般社員にはいつも早く帰れと言うけれど、彼は社長の次に偉い取締役であり、営業本部長も兼任しているという多忙な人。定時に帰っている姿なんて見たことがないし、会社の外に出て行く時は、だいたい仕事関係だ。

「……いや、今日は予定があって、早く帰らせてもらう」

 そう答える須田さんは、どこかソワソワして落ち着かない様子。

 いつもの厳しい雰囲気と違うので、もしかしてデート? と聞きたくなったけれど、さすがに直接尋ねる勇気はない。

「金曜ですもんね。私もちょっと楽しみな用事があって」

 そう言って愛想笑いを浮かべてみたものの、須田さんはクールな目でちらりと私を見下ろした。

「別に、金曜だからってプライベートの予定が入っていることなんて俺にはあまりない。今日は特別だ」
「そうでしたか……すみません、失礼しました」
「別にお前が謝ることじゃないだろう」

 ……会話終了。

 気まずさマックスのところでエレベーターのドアが開き、須田さんと一緒に乗り込む。

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