ひとりぼっちの上司と私
「では、お先に失礼します」
「ああ、お疲れ」
自動ドアからビルの外に出た瞬間、バッグの中でスマホが鳴っていることに気づく。
歩道の端で立ち止まり、スマホをチェックする。ゆうメロからの通知だった。
このタイミングなら、おそらくヤスダさんかイザナミさんからのメッセージだろう。
アプリを開いてみると、予想通りメッセージが一件届いている。差出人はイザナミさんだ。
【お疲れ様! 実はあたし、午後から体調悪くて今日のオフ会行けなくなっちゃった! ごめんだけど、今日はユリコさんとヤスダさんで楽しんできて】
「えっ……」
唇の隙間から、思わず戸惑いの声が漏れた。
三人で会うつもりだったから、ヤスダさんとふたりきりになると思うと急にハードルが上がる。
オフ会の話が出た時に本人も気にしていたが、ヤスダさんは男性。男の人とふたりで食事をするなんて、雄馬と別れてから初めてだ。
性別以外、彼のことはなにもわからないのに大丈夫かな?
会社員だと言っていたから、十代ってことはないだろう。同じ理由で六十五歳以上でもなさそうだけれど、それにしたって幅が広すぎる……。あの丁寧な話し方から考えると、結構年上かな……?
その場に立ち止まってしばし考え込んでいると、スマホから音が鳴る。ゆうメロから、追加の新着メッセージの知らせだ。