ひとりぼっちの上司と私

 料理が並んだ頃には、私からゆうメロを始めた時期について、ぽつぽつと語り始めた。

「なるほど、転職を機に地元を離れて、近くに友達がいない環境だったから……か。じゃあ、加納も俺より少し先輩なだけなんだな。それにしては慣れるのが早いのは、若さか……?」
「須田さんだってずいぶんお上手になったじゃないですか」
「そうは言っても、石拾いのヤスダだけどな」

 鼻を鳴らして自嘲する彼。お酒が入ったせいか、会社にいる時よりは壁がなくなっている気がする。

 それにしても、いまだにチュートリアルでつまずいていた経験がコンプレックスらしい。

「遠い目をしないでください。ちなみにヤスダって名前は、須田をもじっただけですか?」
「ああ。どうせネーミングセンスも壊滅的だよ」

 自分で言って自分で()ねている。

 酔うと性格が変わるタイプ? 普段の彼とは全く違う表情が、ちょっぴりおもしろい。

「誰もそんなこと言ってません。私だって、自分の名前からちょっと変えただけですから」

 恥ずかしいので詳細は語らなかったが、須田さんは軽く首を傾げてなにか考えると、手にしている割りばしで空中に文字を書いた。

「莉々、Lily……百合……なるほど、それでユリコか」
「ぶ、分析しなくていいです」
「しかし、どうして地元を離れて東京に? ……いや、言いたくなかったら構わないが」

 尋ねている途中で、私の表情が少し翳ったのに気づいたのだろう。最後に気遣いを添えてくれる。

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