ひとりぼっちの上司と私

 私はコップに四分の一ほど残っていた日本酒をグイッと飲み干すと、ほんのり熱を帯びた吐息を吐き出し、上京に至るまでの出来事や、自分の心に起きた変化をなぞっていく。

「私の地元……特に祖父母世代がまだけっこう古い価値観を持ってて、親はそれに比べたら少しマシなんですけど、やっぱり〝地元で結婚して子どもを産むのが善〟って感じの空気が、地域全体に根強く残ってるんです。もちろん、気にせずどんどん外へ出て行く友達もいましたけど、私はどっちの人生を歩みたいんだろうって、けっこう長いこと真面目に悩んでました」

 須田さんは箸を置き、じっと私を見ている。

 もう少し適当に聞き流してくれればいいのに……と思いつつも、そういえば彼はヤスダさんと同一人物だった、と思い出す。

 ヤスダさんなら、きっと真剣に耳を傾けてくれるだろう。

「結局地元で就職しましたけど、その後もなんとなく、本当にこれでいいのかなって思いがなくならなかったんです。それどころか、東京への憧れとか、元々やりたかったものづくりの仕事が気になって……転職活動を始めました」
「親御さんは反対したんじゃないか?」
「はい、かなり。それに……付き合っていた彼氏とも連日大喧嘩で」

 少し前に彼のSNSを見てネガティブな気持ちになったが、今はお酒の席だからか、笑って話すことができた。

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