ひとりぼっちの上司と私

「彼はたぶん、地元で結婚して幸せになるビジョンを疑いもなく思い描いていたんですよね。だから、急に私に裏切られたように感じたんだと思います。ちなみに未練は全然ありませんけど、いまだに許せないことがひとつだけあって」

 思い出すのも嫌になる発言だけれど、ここで須田さんに聞いてもらえば、きれいさっぱり消化できそうな気がする。

「許せないこと?」
「はい。私が今の会社に内定をもらって、東京行きがハッキリ決まった時……少しも応援してくれる気持ちはないのかって、彼に聞いたんです。そしたら、彼……『俺の中にあるのは、彼女ガチャ外れたって気持ちだけだ』って。私がカプセルトイの会社に行くのを知ってて言ったわけですから、なかなかの暴言ですよね。おかげで、別れる決心もついたからいいんですけど」

 話し終えた私は、手元にお酒がなくなってしまったのでタブレットに手を伸ばす。

 やっぱり、この話はやめた方がよかったかな……。

 せっかく打ち解けてきていたのに、須田さん、また険しい顔になってきちゃった。

 タブレットで飲んでいたお酒と同じものをもう一杯注文し、あまり減っていない漬物の皿に箸を伸ばす。

 すると、しばらく黙っていた須田さんが、ため息交じりに呟いた。

「……まったく、やめてほしいもんだよな」
「えっ?」
「なんとかガチャって言い方だ。しかも、大体その後に続くのは〝成功〟か〝失敗〟のどちらか。世の中のあらゆることを二択で評価して断罪するのは楽だし、適度に正義感も満たされるんだろう」

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