ひとりぼっちの上司と私

「もちろんです。たぶん、次にゲームの中で会う時はちょっと気まずいと思いますが、仕事とゲームは別です。こちらこそ、今後ともユリコをよろしくお願いします」

 うやうやしく頭を下げると、須田さんがホッとしたように息をついて笑う。

 笑うと目尻が下がるんだな……とぼんやり思うとともに、鬼上司のイメージはすっかり払拭された。

 今までずっと怖い人だと思っていた彼ですら、話をしてみれば共通点がいくつもあって、思っていたよりとても親しみやすい人だった。

 会社の先輩方とも、こうやってきちんと向き合えばもっといい関係が築けるんじゃないかな。

「私、今日オフ会に来てよかったです。仕事のことで色々とくすぶってた気持ちがスッキリしました」
「店の前で会った時はどうなるかと思ったけどな。……結果、長らく会社での様子を心配していた部下が元気を取り戻してくれてよかった」

 タブレットでメニューを見ながらなにげなく言った須田さんだが、初耳の情報があったので、思わず聞き返してしまう。

「心配? 私をですか?」
「ああいや、別に深い意味はない。ただ、部署で孤立しているように見えたから、上司として少し気に留めていたんだ。……さて、そろそろマグロでも頼むか」

 視線を泳がせて首の後ろを撫でる彼は、頬から耳にかけて真っ赤になっていた。

 お酒のせいもあるのだろうけれど、たぶん、盛大に照れている。

 ……本当に、優しい人なんだ。

 図らずも鬼上司の素顔を知ったその夜、彼と飲んだお酒はとても美味しかった。

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