ひとりぼっちの上司と私
【でかいな】
【お寿司にしたいですね。笑】
たわいない会話を交わし、また釣りを再開する。
しばらくふたりとも黙っていたけれど、やがて須田さんがなにもかかっていない釣竿を引き上げ、消波ブロックに腰かけた。
どうやら釣りはおしまいらしい。
【……部下を心配していた俺の方が、今は後ろを歩いているみたいだ】
続けて入力されたチャットの文面に、少しどきりとした。
須田さん……どうしたんだろう。落ち込んでいるというか、寂しそうというか。
気の利いた言葉を掛けたいけれど、上司である彼の苦労は私には想像がつかないし、助言できることもないよね……。
【そんなことないですよ。私がヤスダさんの前を歩けるのは、このゲームの中だけです】
大した励ましにはならないと思いつつも、明るくそう言ってみる。ヤスダさんが腰を上げ、再び隣に並んだ。
【気を遣わせて悪い。さて、俺ももうちょっと大物を狙ってみるかな】
須田さんは弱音を吐いた自分を恥じるようにそう言って、またゲームを楽しむことに集中する。
私も自ら話題を蒸し返すようなことはしなかったけれど、彼が抱えているものがなんなのか、オフ会の時からずっと気になっている。
でも、私はただの部下兼、ゲーム仲間。
あまり深くは立ち入れない立場であることが、少しもどかしかった。