ひとりぼっちの上司と私
翌日、私は仕事中に須田さんの姿を探して会社内のあちこちウロウロしていた。
営業部のデスクには彼の姿がなかったが、所在を示すホワイトボードには外出中と書かれていない。
彼がよくいる場所といえば……そうだ、社長室。
くるりと踵を返し、今度は社長室へ向かう。部屋の前でドアをノックをすると、社長の声で「どうぞ」と返事があった。
「失礼します」
須田さんの所在を尋ねようとしたその時、社長のデスクの前に張本人が立っていることに気づく。
やっぱり、ここにいたんだ。見つかってひとまずホッとしたものの、社長も彼もいつになくシリアスな空気を纏っている。
「どうしてもダメかな? シリコン素材に強いのは確実に遠山物産なんだけど……」
遠山物産……? 化学薬品や合成樹脂に特化した、大手商社の名だ。タイニーポケットのような中小企業とはあまり縁がない大企業だと思うのだけれど。
「はい。いくら前に勤めていたとはいえ俺はもう関係者ではありませんし、遠山物産を間に立てるとなると、コスト面でメリットがなさすぎます。多少は質を落としてでも、シリコンを扱っている他の会社から仕入れる方が合理的です」
……須田さんが、前に勤めていた? 遠山物産に?