ひとりぼっちの上司と私
「それは大変だ。今頃どこかでやさぐれてると思うから、探して慰めてやって」
「慰める……?」
「まぁ、本人は大丈夫って顔してるけどね。とにかく頼んだよ、加納さん」
「……はぁ」
よくわからないが、須田さんの様子がおかしかったのはなんとなく私も感じた。彼を慰める方法はわからないけれど、見つけたら話をしてみよう。
社長室を出て、再び彼の姿を探すこと数分。どこか哀愁を纏う須田さんの背中を見つけたのは、廊下の途中に設けられた簡易的な休憩スペースだった。
自販機が二台と、キューブ型のカラフルな椅子がランダムに置かれている。彼はそのうちのひとつに座って、缶コーヒーを傾けていた。
驚かせないよう、少し離れた場所から声を掛ける。
「須田さん」
一拍置いて、彼は振り向いた。感情の読めない無表情だ。
社長室で聞いてしまった話についていきなり突っ込むのも無神経な気がして、まずは本来の目的通り、彼に伝えるべき仕事の話をする。
「さっき、工場の方から色数を減らしたいと連絡がありました。前に一度お断りしたんですが、減らせない場合は納期が大幅に遅れると改めて相談されて……」
「……わかった、こっちで調整する」
頷いた彼は、そう言ってすぐに私から視線を外した。ひとりにしてくれ、という無言のオーラが彼の周囲に漂っている。