ひとりぼっちの上司と私
このままなにも聞かずに去ることもできるけれど……先ほど社長が呟いた言葉が、脳裏をよぎる。
『まだまだアイツの傷は癒えそうにないね……』
もしも社長の言う通り、須田さんの心に傷があるなら、私は……。
「須田さんの前の職場って……遠山物産だったんですね。さっき、社長と話しているのが聞こえてしまって」
彼の肩が微かに跳ねる。私は彼の方へ歩み寄り、オレンジ色のキューブに腰を下ろした。
遠慮がちに彼を見つめると、須田さんはしばらく眉根を寄せて悩んだそぶりを見せた。
やがて、小さくため息を吐く。
「……ああ。最も激務と言われる営業部にいた。しかし、周りの同僚たちのようにはうまくいかず、成績は落ちこぼれ。それでもなんとかしごみつこうと五年耐えたんだが、体調を崩してな。……結局、ドロップアウトした」
現在の須田さんと〝落ちこぼれ〟という言葉のイメージが頭の中でまったく重ならない。
彼のような人でも折れてしまうくら、遠山物産の営業部は壮絶な職場環境だったのだろうか。
「そうだったんですね……それで、タイニーポケットに」