ひとりぼっちの上司と私
「そうだ。医者からはしばらく休んだらどうかと言われていたが、働かずにいる自分が許せなくて、すぐに再就職先を探した。あちこちの会社と面接をして、結果的に歌代社長が拾ってくれたんだ。『僕の右腕になる気はない?』って口説き文句でな。蓋を開けてみたら、ほぼ両腕分の仕事を丸投げされる環境だったけどな」
そうは言いつつも、歌代社長には感謝しているのだろう。彼の声音は優しい。
遠山物産にいる時は苦しかったとしても、今の彼がこの会社で頑張れているなら、これ以上無理に話を聞き出す必要もない……?
そう、思いかけた時。
「今の職場環境に不満はないし、俺なりにプライドも持って仕事をしている。だが時々……〝負け犬〟という言葉が脳裏をよぎるんだ。一度考え始めると、今も遠山物産で切磋琢磨しているであろう同僚たちへのコンプレックスが次から次へと湧いてくる。……そんな自分は馬鹿だと思うのにやめられない」
伏し目がちに言った彼は、ため息をついて缶コーヒーに口をつける。
須田さんがなにか背負っていることはわかっていたものの、想像以上にその荷物は重そうだ。
このままひとりで抱えていたら、潰れてしまうのではないだろうか。