ひとりぼっちの上司と私
私にできることなんてたかが知れているけれど、見て見ぬふりはしたくない。
元カレの彼女ガチャ発言に縛られて立ち止まっていた私が、今前を向けているのは間違いなく須田さんのおかげなのだ。
――今度は私が、彼の役に立ちたい。
「私は須田さんがこの会社にいてくれなかったら、仕事の楽しさを知らないまま、地元に帰ることになっていたかもしれません。だから、そんな風に言われたら寂しいです。須田さんにはこれからも、私を力強く導いてくれる鬼上司でいてほしいって、思います」
なんとか彼の心に届いてほしいと願いながら、拙くも正直な気持ちを伝える。
「加納……」
下を向いていた須田さんの目が私を捉え、そのままジッと見つめられた。視線を交わしたまま沈黙する時間がしばらく続き、耳の奥で鳴る鼓動がやけに大きく感じられる。
な、なんか恥ずかしくなってきたかも……。
居たたまれなさに耐えきれず、私はのんきに笑ってみせる。
「そ、それにうちの社長って芸術家タイプというか、気まぐれだしどんぶり勘定だし、須田さんがいなかたら会社はとっくに潰れているんじゃないでしょうか。そういう意味でも、須田さんはこの会社になくてはならない存在だと思います」
私個人の感情ではなく、会社のみんながそう思っている、というニュアンスにして照れくささをごまかす。
須田さんは軽く瞬きをして、口元にふっとやわらかい笑みを浮かべた。