ひとりぼっちの上司と私

 ガチャの景品そのもののサンプルではなく、カプセルに同梱して説明書の役割を果たすミニブック、そして、本体正面に掲げる台紙について、なにか思うところがあるようだ。

「と、言いますと?」

 我妻さんに尋ねられ、須田さんは今一度、手元の資料をジッと睨む。

「ブドウ味のグミだから〝ブドウ〟、イチゴ味だから〝イチゴ〟――カラーバリエーションを表す言葉が単純すぎて、購買意欲がそそられない。そういう細かいところを突き詰めてこそ我妻だろう。このままではまったくお前らしくない」

 言われてみれば……。我妻さんは商品開発そのものもとても楽しんでやっているけれど、ちょっとした言葉選びも細部まで凝る人だ。

 須田さん、よく見ているな……。

「……すみません。おっしゃる通りです。今月、ちょっとひとりで業務を抱え込みすぎてて、カラバリについては、仮で決めたネーミングのままここまで来てしまいました」
「リーダーとして責任感があるのはわかるが、もっと周りを頼れ。いつまでにリテイクできる?」
「そうですね……明後日までには。加納さん、よかったらアイデア出し手伝ってくれる?」
「えっ。も、もちろんです! 私なんかでよければ……!」

 突然のご指名に少し慌ててしまったが、即座に承諾する。

 商品企画部の中で任されている仕事が少ないのは、当然一番下っ端である私。こんな時くらい、いつもお世話になっている先輩の役に立ちたい。

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