ひとりぼっちの上司と私
「それは社長の日頃の行いが悪いからです」
「ひどいよ須田……。今のは、『歌代社長も無視しないでくださいね。あなたが倒れたら、会社の舵取り役がいなくなってしまいますからね』――と優しく言ってくれるところだろう!」
拗ねる社長を須田さんが軽くあしらい、会議はやがて円満に終わった。
会議室から自分たちのオフィスへ戻る途中、我妻さんが駆け寄ってきて耳元でこそっと囁く。
「なーんか須田さん、最近変わったよね」
「変わった……? どんなところがでしょう?」
急に須田さんの話をされたので、密かに彼を意識しているのがバレたのかと思ってぎくりとする。
「さっきの会議でも言ったけど、怖い顔してるのが減ったと思うのよ。会議でダメ出しする時も、今まではシンプルかつ鋭い言葉でざっくり切りつけてきたけど、わかりやすい言葉を選んでくれるようになったというか」
「そう……かもしれませんね。私はそんなに実感ないんですけど」
どっちとも取れる曖昧な返事をして、動揺をごまかす。
すると、我妻さんがもう一段階声を潜めて言った。
「もしかしたら、彼女でもできたのかもねぇ。あの人仕事できるし、黙っていれば普通にカッコいいし」
「彼女……」