ひとりぼっちの上司と私

 例のオフ会以降、なぜか『イザナミさん』の姿もまったく見かけなくなってしまい、所詮ネットの繋がりとはそんなものか……と、孤独で後ろ向きな俺が再び顔を出し始めていた。

 仕事はうまくいっているし、プライベートが味気ないのには慣れている。今までの生活に戻るだけなのだから、そう悲観的になる必要はない。

 そうは思っても、満たされない気持ちを抱えたまま時間は過ぎていった。


 十月下旬のある日、俺は社長室へと出向いた。いつものごとく、歌代社長が後回しにしている事務作業の催促をするためだ。

 ドアをノックすると社長の声で返事があったので、そのまま室内へ足を踏み入れる。デスクの前には社長と、段ボールを両手に抱えた加納が向き合ってなにか話している。

「僕のワガママを聞いてもらって悪いね。加納さんはもうすっかりうちの重要な戦力だ。これからもよろしく頼むよ」
「ありがとうございます! 頑張ります」

 彼女が力強く頷くと、社長がその小さな肩にポンと手を置く。それを目にした瞬間、もやっとした感情が胸の内に広がった。

 本人に嫌がっている様子はないし、セクハラだと騒ぐほどの接触ではないが……このご時世、お互いの立場や性別にかかわらず、むやみに他人の体に触れることにはもう少し慎重になるべきではないか。

 考えているうちに悶々とした気持ちがますます膨らんできて、俺は大股でふたりの方へ近づいていく。

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