ひとりぼっちの上司と私
「悪い冗談はやめてください。社長という立場をかざして女性社員を個人的に誘うなんて、公私混同のセクハラです。しかも、よりによって地方出身で日々心細さを抱えている加納に付け込むなんて、男の風上にも置けない――」
「ストップ。なにもそこまで言わなくてもいだろう。彼女を個人的に誘うなんて嘘だよ。いつも頑張ってる商品企画部のみんなにご馳走するつもりだからと、他のメンバーへの伝言を頼んだまでだ」
「はっ……? 嘘……?」
そう言われても、一度ヒートアップした俺はすぐには落ち着けず、納得できないまま肩で呼吸をする。
ムキになったままの俺を見て、社長はおかしそうにクスクスと笑った。
「まったく。加納さんのこととなると容赦がないな。どっちが公私混同だよ、須田」
からかうように言って、折り曲げた肘で俺をの体をつつく。彼の意図をようやく理解した俺は、怒りと羞恥で頭から湯気が出そうになるのを感じる。
「耳まで真っ赤だよ。ここまでわかりやすい反応を示すとは予想外だったな」
「……俺で遊びましたね?」
気休めに首をさすってみるものの、火照りはなかなか収まらない。
社長は含みのある笑みを浮かべると、デスクの方へ戻って椅子に深く腰掛けた。背もたれをギシッと鳴らし、再び俺を見る。