ひとりぼっちの上司と私

「単にからかいたかっただけじゃないよ。お前の本心を知りたかった」
「本心?」
「ああ。今、それがわかって安心しているところだ。人と深く関わることを長い間拒絶し続けていた須田に、ようやく特別な人ができたんだなって」

 痛いところを突かれた気がして、俺は黙って息を呑んだ。

 社長は、俺が遠山物産にいた過去も、退職した直後のかなり危険な状態だった俺のことも知っている。

 今でこそ俺が社長に苦言を呈す場面が多いとはいえ、転職してすぐの頃は体調も精神状態も万全ではなく、心配されても仕方がない姿を彼には多く見せてきた。

 それでも、この人は俺のやりたいようにやらせてくれた。

 遠山物産に勤めていた頃にはあり得なかった自由度の高い働き方が、俺をもう一度まっとうな社会人に戻してくれたんだ。

「彼女は、俺にとって特別……そう、見えますか?」

 自分の中でも薄々答えが出ているが、第三者の社長の冷静な意見が聞きたかった。

 仕事に全力を傾けられる今の状況はとても恵まれた環境と言えるが、さらに欲深いこの感情を、果たして育ててもいいのか。彼女はそれを望んでいるのか。

 長年人間関係の構築から目を逸らしてきた俺にとっては、わからないことだらけなのだ。

「驚いたな。散々僕に嫉妬していたのは無意識だったのか?」

< 95 / 205 >

この作品をシェア

pagetop