ひとりぼっちの上司と私
「嫉妬……」
「まず、この部屋に俺と加納さんがふたりでいるのを見た瞬間のお前の目、普通じゃなかったよ。次に、試しにちょっと加納さんの肩に手を置いたら、お前の殺気が増した。さらに、彼女がドアを開けるのを僕が手伝おうとしたら、間に割って入って段ボールを持ってあげたりしちゃってさ。そういうの全部、僕に嫉妬したから出た行動だろ?」
すべてを見透かしたように言われると、照れくささもあったが、腑に落ちることばかりだった。
俺は確かに、社長に嫉妬していた。
ただ、彼女に近づくなと頭で思うより先に、本能で身体が動いていた気がする。だから自覚がなかったのだろう。
「と、いうわけだから、彼女に特別報酬を与える役割はお前に譲るよ。せいぜい頑張れ」
「しかし、こういうことは一方的に進めるべきでは……」
「お前、営業は得意なくせに、恋愛はてんで苦手なんだな。恋なんて、最初はどちらかの一方的な想いから始まるんだよ。目が合った男女が同時に恋に落ちて、同じ分量の愛情を抱くなんて奇跡はそうそうないだろう。努力して振り向かせるんだよ、加納さんを」
なんだか、今日は社長の方が敏腕営業マンのよう。
強気な恋愛観にやや気後れしつつも、〝最初はどちらかの一方的な想いから始まる――〟という言葉は、俺に勇気をくれた。