ひとりぼっちの上司と私
「なんとなく、理解しました。しかし、社長はそこまで恋愛に詳しいのにどうしてずっと独身で――」
「須田……お前は本当に俺への気遣いが足りなすぎるぞ……」
どうやら独身であることは不本意らしい。社長は胸元を手で押さえ、おおげさに苦しそうな演技をした。
感情表現豊かなと彼とのやり取りのおかげで、胸のつかえが少しは取れた気がする。
すぐにグイグイとアプローチできる性格ではないが、少しずつ、俺なりに行動してみよう――。
数日後の昼休み。以前俺が遠山物産にいた過去を彼女に話した休憩スペースで、加納がひと息ついている姿を見かけた。
その手に持っているのがカフェラテのペットボトルだったため、あの時、彼女の好みも聞かずに押し付けた飲み物の選択が間違っていなかったことを知り、内心ホッとする。
軽く息を吸って〝よし〟と心の中で自分の背中を押すと、さりげなく彼女の方へ近づいていく。
「お疲れ」
「須田さん、お疲れ様です」
「昼飯は? もう食べたのか?」
「はい。あ、今の私にあまり近寄らないほうがいいかもです! 我妻さんと、最近ハマっているこってり系のラーメンを食べて来たばかりで、歯を磨いてもいつまでも自分からニンニク臭がする気がして……」
前半部分を聞いた瞬間、暗に自分を拒絶されたのかと思ってショックを受けそうになったが、理由を聞いて、取り越し苦労だったと安堵する。