ひとりぼっちの上司と私
しかし、彼女が距離を気にしているようなので、ひとつ椅子の間隔をあけて腰を下ろした。
「胃が強いんだな。俺はもうラーメンはあっさりしたものしか受け付けないよ」
「じゃあ、カップ麺だとなにを食べます?」
「……そういえば、長らくカップ麺自体を食べていないな。体を壊した時に自炊の習慣がついたのと、外食にしろ総菜を買うにしろ、主食とおかずがバランスよく揃っているのを選ぶのがクセになってて……なんか年寄りくさいか?」
せっかく加納がカップ麺という身近な話題を振ってくれたのに、彼女の求めているであろう回答ができないのが悔しい。
もう体は元気なのだから、カップ麺くらい自分に許しておけばよかった。
「わー、自分で作るなんて尊敬です。私は会社から帰ってきたらクタクタで、キッチンに立つという発想がありません」
彼女の口から〝尊敬〟のひと言が出ただけで、思わず舞い上がりそうになる。
……落ち着け。単に、上司の俺に対して適切な言葉を選んだだけだ。
「そんな大層なものは作らないぞ。それこそ、ひとりぶんのマグロの刺身を買ってきて、白飯と味噌汁だけを自分で用意するとか」
「ご飯を炊いてお味噌汁を用意するだけで、百万点だと思います」
「大袈裟だな」