ひとりぼっちの上司と私
自然とおかしさがこみ上げ、ふっと笑う。取るに足らない会話なのに、彼女と同じ空気を共有しているというだけで、感情の振れ幅が大きくなっている気がする。
椅子一個分離れている微妙な距離が、なんだかもどかしい。
「なぁ、加納……じゃなくて、ユリコさん」
「はい。……って、な、なんでそっちの呼び方を……?」
もう少し彼女に近づきたいが、いきなり莉々と呼ぶ勇気はない。加納だって戸惑うに決まっている。
苦肉の策で口から出たのが〝ユリコさん〟だった。
「もし、今夜時間があるなら、あっちで会わないか? ゆうメロの波止場。それとも、釣りはもう飽きたか?」
ゲームに誘っているだけなのに、俺の心臓は過剰に暴れていた。断られたら、しばらく落ち込むかもしれない。
まるで思春期のようだが、恋愛なんて最後にいつしたかも覚えていないので、似たようなものだろう。
加納はなぜか頬を赤く染め、丸くて愛らしい目を瞬かせる。
「わかり……ました。最近、仕事が充実しているからかすぐに眠くなっちゃって、ログインしてなかったんですよね。久々にやるから下手になっているかもですが、頑張ります」
やはり、最近の彼女はゲームから遠ざかっていたらしい。睡眠を優先したいと思っているなら、無理やり誘ってしまったようで申し訳ない。