この度、俺様パイロットとご成婚しました。

「どうした?」
「あ、いいえ。なんでもないです」

 航輝の後ろを歩きチョコレートショップへ向かう道中、 先ほどのメッセージのことばかり頭をよぎってしまう。

(深山さん三年間、どうしていたんだろう……)

 ビリーブマリッジをやめてから、彼女の動向は一切わからなかった。
 あれからずっと婚活をしていたか。
 理想の相手は見つかったのか。
 なぜ今さらになって、ビリーブマリッジの門をたたく気になったのか。
 一度考えだしたら気になりだして止まらなくなる。

「危ないっ!」

 突然、航輝が叫んだかと思えば強く身体が後ろに引かれる。
 クラクションのけたたましい音が鳴り響き、運転手が窓から顔を出しなにか喚きたてると走り去っていた。

「あ……」

 鈴菜は信号が変わったことに気づかず道路に飛び出そうとしていたのだ。車に轢かれる寸前で航輝が気づいてくれたので、事なきを得たが本当に危なかった。

「どうしたんだ?さっきからぼうっとしていて変だぞ。なにかあったのか?」

 航輝も鈴菜の様子が変なことに気づいたのか、顔を覗き込んでくる。

「航輝さんには関係のない話ですから」
「もしかして鈴菜が既婚者だと偽装していたことと関係があるのか?」

 言い当てられた鈴菜は弾かれたように顔を上げ、航輝を仰ぎ見た。

「ずっと気になっていたけど、鈴菜から話してくれるまで待っていたんだ。そろそろ聞かせてくれないか?」

 そう言われたのを皮切りに、ふたりはチョコレートショップへ行くのを取りやめ、人の少ないハドソン川沿いを歩くことにした。

 日本と違い川幅も広く向こう岸の風景が遠い。まるで海のように穏やかな水面を眺めながら、鈴菜は語り始める。
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