この度、俺様パイロットとご成婚しました。
川沿いを歩いている途中でタクシーを拾い、ホテルまで戻ってくるとすでに日が暮れ始めていた。
「悪いな。最後まで一緒にいられなくて」
「いえ。これからお仕事なんでしょう?気をつけてくださいね」
「ああ」
航輝はこれから空港へ移動し、深夜発の日本行きの飛行機に搭乗する予定なのだ。つまり、ニューヨークで彼と会うのは最後になる。
「部屋まで送るよ」
「いいんですか?」
「ああ」
名残惜しいのは航輝も同じようで少しでも時間を共有しようと、わざわざ客室まで鈴菜を送り届けてくれる。
鈴菜がルームキーを開けると、お土産の入った紙袋を窓際のテーブルの上に置き、マンハッタンの景色をともに眺める。
「いい眺めだな」
「本当ですね」
窓ガラスに手をついて同じ景色を眺めていると、なんとなく離れがたいものを感じる。
「次はもっとゆっくり観光しような」
「次?」
「また来ればいいだろう?新婚旅行で来るのも悪くないな」
「新婚旅行……」
形だけの結婚なのだから旅行など行く必要はないと、突っぱねればよかったのに鈴菜はつい考え込んでしまった。
ふたりで冬のニューヨークを歩く姿を想像したが、思ったよりもしっくりくる。
想像するだけで楽しそうだが、離婚前提の契約結婚には不確かな未来の約束はいらないはずだ。