この度、俺様パイロットとご成婚しました。
6.契約結婚のおわり
ニューヨークから帰国して、数日後。
鈴菜は緊張をほぐすようにふうっと息を吐き出してから、カウンセリングルームのドアノブに手をかけた。
意を決して扉を開けると、ソファには見覚えのある女性が座っている。
彼女と最後に会ったのは三年前。印象が少し変わった。
ふっくらとした身体つきは、ややすっきりとし、険しい表情ばかりしていた以前よりも、瞳に穏やかな光をたたえている。
「お久しぶりです、深山さん」
「こんにちは、速水さん」
鈴菜は悩んだ末に深山の担当を引き受けた。
航輝が背中を押してくれたということもあるが、なにより彼女を傷つけてしまった自分ともう一度向き合うべきだと思った。
「まずは当相談所の説明からさせていただきますね」
かつて会員だった彼女には不要だとも思うが、一応形式通りの説明を始める。
深山は、時々うんうんと頷いたり、控えめに相槌を打ったり、大人しく鈴菜の話を聞いてくれた。
「説明は以上です。なにかご質問はありますか?」
「いいえ、ありません」
深山はそう言うと慣れた手つきで、次々と必要な書類にサインをしていった。
どうやら本当にもう一度ビリーブマリッジで婚活を始めるつもりらしい。