この度、俺様パイロットとご成婚しました。

「速水さんっ!」

 突然片手をあげた若槻が現れ、鈴菜はきょとんと目を丸くした。

「若槻さん?どうしてここに?今日は面談の予定は入っていませんよね?」

 ニューヨーク行きにあたって、直近のカウンセリングスケジュールは何度も確認した。若槻のカウンセリング予定は二週間も先のはずだ。

「速水さんが出てくるのを待っていたに決まっているじゃん。今から暇?食事でもしようよ」

 若槻は鈴菜が喜ぶのを期待しているのか、うきうきと告げたがこれには鈴菜もドン引きだ。

(待ち伏せしてたってこと?)

 婚活で待ち伏せはマナー違反だ。アドバイザーを通さず会員に直接声をかけた場合、厳重注意となる。

 若槻の軽い口ぶりからすると、ビリーブマリッジに出入りする女性会員にも声をかけている可能性すらある。

 今まで衝突を避けていたが、はっきりと口にして突き放さなければ伝わらないこともある。

「若槻さん、待ち伏せはやめてください。私は既婚者ですし、あなたと個人的なお付き合いをする気はありません。あまりにも度が過ぎる場合、ビリーブマリッジを退会していただくことになります」

 鈴菜が毅然とした態度で、ぴしゃりと言い放つと若槻はアハハと声をあげて笑い始めた。
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