この度、俺様パイロットとご成婚しました。
「鈴菜っ!」
待ち続けて一時間。大急ぎで帰り支度を終えた航輝が息を切らしながら展望デッキにやって来る。
いまだかつてこんなに余裕のない航輝を見たことがあるだろうか?
「航輝さんっ!」
航輝の姿が見えるなり、鈴菜はすぐさま彼に飛びついた。
「鈴菜?」
離婚を切り出してきた妻の態度ではなく、航輝は戸惑いを隠せなかった。
「お願い!パイロットを辞めるなんて言わないで!」
悲痛な思いで叫ぶが、航輝はイマイチピンときていない様子だ。
「なんの話だ?」
「だって、お父さまが!」
達夫が事務所にやって来た経緯を話し始める。
最後まで話し終わると、航輝はきょとんと目を瞬かせた。
「ああ、たしかにパイロットを辞めるとは言ってあるけど、今すぐ辞めるとは言っていないぞ?」
「……え?」
今度は鈴菜が目を瞬かせる番だった。
航輝はあははと声をあげて笑い始めた。