この度、俺様パイロットとご成婚しました。
「今まではパイロットの仕事に専念していたけど、結婚もしたことだし、そろそろ退職後を視野に入れて経営の勉強を始めるつもりだと父さんには伝えたはずだ。一杯食わされたんじゃないか?」
温和な性格をしているので人が良さそうにみえるが、さすが航輝の父親だけのことはある。
しれっとした顔で虚構を混ぜてくる胆力はさすがとしか言いようがない。
「じゃあ、まだパイロットは辞めないんですね?」
「ああ」
「よかった……」
ホッと胸をなで下ろしたのも束の間、今度は航輝からぎゅっと抱きしめられる。
「あ、あのっ!航輝さん?」
すっかり忘れていたが、ここは航輝の職場である。万が一知り合いに見られたら、気まずいのではないだろうか。
「鈴菜は本当に離婚したいと思っているのか?」
こちらが切なくなるほどの弱々しい声色で尋ねられ、ドキンと胸が跳ね上がる。
「俺は鈴菜じゃなきゃダメだ」
嘘偽りのない言葉に心が震える。
(ああ、もう……)
離婚するなら伝えてはいけないと必死で我慢していたのに、すでに戻れない場所まで来ていたのだといまさら気づいてしまった。
「航輝さんが好きです。私も航輝さんじゃなきゃダメみたい」
鈴菜は正直に自分の気持ちを伝えると、航輝を抱きしめ返したのだった。