この度、俺様パイロットとご成婚しました。

「婚活では、あなた自身も女性から選ばれる立場だということを忘れないでください」

 そう伝えると若槻はきょとんと目を丸くした。鈴菜の言葉の意味が全くわからないのだろう。
 彼の人生において、女性とは自分が選ぶものであり、選ばれるために努力する必要はないと思っているのだ。

「そんなことより、今日は何時に仕事終わるの?」
「お教えできません」
「美味しいオイスターバーがあるんだ。一緒に行こうよ」
「行きません」

 即答すると、不満げに唇を突き出す。

「ちょっとぐらいいいじゃん!」
「しつこく誘うのはマナー違反ですよ。それに、私は既婚者ですから」
「だってさ。速水さんの旦那より俺の方がいい男だろう?」

 ニッと笑うその表情には、自信があふれている。
 既婚者にアプローチするのはやめてほしいと言っているのに、どちらがいい男かは本来関係ないはずだ。
 鈴菜は内心呆れながらも、あらかじめ目星をつけておいた女性のプロフィールシートを渡した。

「こちらの方なんかどうでしょうか?笑顔がとっても素敵で、趣味はお菓子作りらしいです」
「あー。うーん……」

 先ほどあれだけ前のめりで鈴菜の予定を聞いていたとは思えないほどの生返事だ。
 この様子だと成婚までは前途多難だ。
 先の見えない婚活に疲れ、目的を見失いかける人は大勢いるが、若槻のそれはまた違う。

(自信がありすぎるというのも考えものね)

 自分を客観視できず選り好みして機会を逸するのは婚活ではよくあるパターンだ。
 結局、この日はろくに話ができないまま、カウンセリングは終了となった。
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