この度、俺様パイロットとご成婚しました。
◇
「おはようございます」
「おはよう、鈴菜!」
若槻のカウンセリングを終えた翌日。事務所の扉を開けると、受付からとびきり明るい声をかけられる。
「昨日、所長にお説教されたんだって?」
鈴菜の姿を見るやいなや、さも愉快とばかりにケタケタ笑いながら話しかけてきたのは、事務員の新貝佐知だ。
佐知とはビリーブマリッジで働き出してからの付き合いだが、同じ年齢、海外ドラマ鑑賞が趣味ということもあり、すぐに打ち解けあった。
「笑い事じゃないよ。私だって人並みに落ち込んでるんだから」
デリケートな話題でからかわれた鈴菜は不満げに口を尖らせた。
仕事を終わらせ帰宅したあと、悔しさと不甲斐なさでベッドの上でひとりジタバタするくらいは気にしている。
「所長が厳しいことを言ったのは、鈴菜に期待しているからだと思うよ。鈴菜がビリーブマリッジで働き出して一番喜んでいたのは所長だもの」
「本当?」
「本当よ。だから、鈴菜もへこたれずにがんばってね。はいこれ、今日の入会希望者のプロフィール」
そう言って佐知はあらかじめ用意してあった黒革のバインダーを鈴菜に手渡した。