この度、俺様パイロットとご成婚しました。

「失礼します」

 カウンセリングルームの扉を開けると、そこには男性がひとり立っていた。

「初めまして、来栖航輝です」

 単なる自己紹介のはずなのに、彼の声には自らの経験に基づいた揺るぎない自信があふれていた。
 たしかにプロフィールから読み取るのは不可能だ。

(驚いた)

 鈴菜は内心うろたえた。
 顔写真が添えられていなかったのでわからなかったが、航輝はなんとも形容しがたい人を惹きつける顔だちをしていた。

 アーモンド形のシャープな目もと、すっと通った鼻筋はツンと上向き。セクシーな厚めの唇はこれまで幾度となく女性の心を惑わせてきたことが窺える。

 まるで熟練の職人の造った彫刻が、そのまま人間になったかのような印象すら受ける。
 少なくとも、鈴菜が今まで出会った男性の中でもとびきりの美形なのは間違いない。

「ビリーブマリッジで婚活アドバイザーをしております。速水鈴菜です」

 鈴菜はいつも通りを心がけながら名刺を渡した。
 これまで何百人もの男性の顔と名前とプロフィールを読み漁ってきたのだ。相手の顔が少し整っているからといって、動揺していては婚活アドバイザーの名が廃る。

「どうぞ、お座りください」
「ありがとう」

 そうすすめると、航輝は長い手足を見せつけるように、腰を深くソファに腰掛けた。
< 17 / 132 >

この作品をシェア

pagetop