この度、俺様パイロットとご成婚しました。
声をかけられた方に顔を向けると、そこにはブルーのシャツとブラックのボトムス姿の航輝が立っていた。
もうそんな時間かと思い腕時計を確認するが、アポイントの時間は三十分も先だ。
「おはようございます」
鈴菜はとっさに営業スマイルを浮かべた。
「空港から直接来たから早めに着いたんだ。時間まで事務所で待っていても大丈夫だろうか?」
「ええ、大丈夫です。こちらへどうぞ」
鈴菜は掃除道具とゴミ袋を佐知に預けると、航輝と一緒にエレベーターへ乗り込み、ビリーブマリッジの事務所がある八階のボタンを押した。
(気まずい)
ボタンの前に立つ鈴菜は背後からの圧力を感じて、緊張で身体をこわばらせた。
じっと見られているような気がしてならない。
どことなく気まずい空気に耐えられなくなったのは鈴菜の方だった。
「昨日の大雨はどうでしたか?空港が大変だったってニュースになっていましたが……」
「ああ。滑走路が一時閉鎖になったからな」
大雨の影響で滑走路が一時閉鎖になったのは、夜のニュースでも大きく取り上げられていた。
「今は特に問題ないな。今朝の便は通常通り運航していたし」
「そうなんですね」
なんでもない世間話ができたことに、鈴菜はホッと息をついた。
なにせ、前回はあんな形で彼を追い返してしまったのだ。気まずいなんてものじゃない。