この度、俺様パイロットとご成婚しました。
「速水さ~ん!まだ~?」
扉の外から若槻の声がして、鈴菜ははっと我に返った。
左腕に嵌めていた腕時計を眺めると、時刻はすでに午後五時を過ぎている。
カウンセリングの終了予定時刻を十五分もオーバーしている。
「仕事が終わったら連絡してほしい」
航輝がそう言って電話番号を書いたメモを鈴菜に握らせるなり、乱暴に扉が押し開かれる。
「おいっ!カウンセリングの時間は過ぎているんだ!さっさと出て行けよ!」
若槻は開口一番、航輝を怒鳴りつけた。
そんな彼のうしろから佐知が申し訳なさそうに、ごめんとばかりに片手をあげる。
おそらく、待合室で待っているように伝えたが、しびれを切らした若槻を止めきれなかった。
「待たせて悪かった。すぐに出ていく」
淡々と謝る航輝の態度が気に食わなかったのか、若槻はすれ違いざまにふんと鼻を鳴らした。
航輝がカウンセリングルームから立ち去った途端に、若槻はだらしなく目尻を下げた。
「やっと俺の番だね、速水さん!」
「どうぞお座りください」
右の手のひらを上に向けソファをすすめる一方、それとばれないように左手で手渡されたメモをジャケットのポケットの中にしまう。
カウンセリングを続けながら進捗のない若槻の婚活プランを練り直している間も、なぜかポケットの中身が気になって仕方なかった。