この度、俺様パイロットとご成婚しました。

「上流階級の中には結婚しないと一人前でないという風潮が残っている。だからこそ母は俺に早く結婚しろと急かすんだ」

 足枷だと言っていたのはこういうことだったのかとようやく腑に落ちる。
 一般的な感覚とはまた違う。

「だからって本当に結婚することないと思いますけど?」
「契約結婚だって立派な結婚の形のひとつだろう?」

 彼の発言を頭ごなしに否定できない。
 明治時代に始まった婚姻制度は、時を超えるにつれ大きく変わっていった。
 婚姻制度にとらわれず、パートナーと共生する事実婚。
 恋愛も性行為も伴わない男女による友情婚。
 週末だけ互いの拠点を行き来する週末婚。
 ライフスタイルによって結婚の定義は増え続け、今なお変化し続けている。

「本当に結婚するつもりなんですね?」
「嫌なら断ってもいい。君の秘密は誰にも言わないと約束する」

 どうやらバラされたくなければ結婚しろと脅したのは、交渉の場に引っ張り出すための方便だったらしい。
 ただ、結婚に関しては嘘でも冗談でもないようだ。
 鈴菜は目の前にあるグラスに口をつけ、そのまま一気に飲み干した。
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