この度、俺様パイロットとご成婚しました。

「わかりました。結婚の話、お受けします」

 グラスをテーブルに置くと同時にそう告げると、航輝は半信半疑の様子で顔を覗き込んできた。

「いいのか?」
「恋愛感情がなくても結婚はできます。そうでなければ、私たちの仕事は成り立ちませんから」

 恋愛結婚が絶対正義だと思われがちだが、鈴菜の考えは違う。
 好きという気持ちだけで結婚したはいいが、その後に結婚生活が破綻するケースは少なくない。
 それは、金銭感覚だったり、家庭環境の違いをすり合わせできないまま、感情のみで結婚してしまった場合によく見受けられる。
 事前のすり合わせが重要だと、鈴菜は会員たちに何度も言い聞かせている。

「それならば、さっそく具体的な話に移ろう」

 航輝はジャケットの内ポケットから、封筒を取り出し、テーブルに置いた。

「内容を確認してくれ」

 封筒を開けるとそこには契約結婚における覚書が記されていた。
 覚書には、結婚における費用は全額航輝が負担すること、契約結婚だと悟られぬよう共同生活を送ること、離婚したあとも生活費と慰謝料は保証することが盛り込まれていた。
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