この度、俺様パイロットとご成婚しました。
「あなたが本気で結婚を嫌がっているのはわかったわ。だからこんな茶番はやめなさい。どこの誰かも知らない女性まで連れてきて、悪ふざけがすぎます」
「彼女とは結婚相談所で知り合ったんだ。素性はたしかだよ」
嘘ではないが真実とは言い難いスレスレのラインにもかかわらず、航輝は何食わぬ顔で説明する。とんでもない名演技だ。
本気で結婚相手を探していたという体を装うためには、結婚相談所で知り合ったと言った方が都合がよい。
「あなた、ご職業は?」
「母の経営する会社でデスクワークをしております」
鈴菜も仕方なく彼の嘘の片棒を担いだ。
(嘘は言っていない)
母の経営する会社というのが結婚相談所なだけで。
デスクワークも多いし、事務員と言っても差支えないはずだ。
「悪ふざけなんて心外だな。俺は本気で彼女と結婚するつもりだよ」
「航輝!」
「お望み通り結婚するんだから文句はないだろう?」
睦美は呆れてものが言えないとばかりに、口をワナワナと震わせる。
「行こう、鈴菜」
航輝は義務は果たしたとばかりにソファから立ち上がり、スタスタと歩き始めた。
鈴菜はペコリと頭を下げると、慌ててあとを追いかけた。
念入りに準備してきたのに、肝心の挨拶は結局、二十分ほどで終わってしまった。
一方的に結婚を告げただけで、睦美はまだ納得していないようだ。