この度、俺様パイロットとご成婚しました。
「鈴菜、話があるからちょっと来なさい」
「わかりました」
名指しで所長室に呼ばれた途端、緊張で身体が強張る。
これまで真由子は娘だからといって、鈴菜を特別贔屓したりしなかった。かといって必要以上に、厳しく叱ることもない。
ちょうどいい距離感を保っていたのに、あえて均衡を破るなんて。
(わざわざ所長室に呼ぶなんて、あまりいい話じゃなさそう)
鈴菜は叱られる前の子どものように戦々恐々としながら、廊下の一番奥にある所長室に足を踏み入れた。
真由子は椅子に腰かけ、手もとのノートパソコンを眺めつつ、居住いを正す鈴菜にチラリと視線を送る。
「最近、成婚数が減っているみたいね?」
椅子に座るやいなや、単刀直入に指摘され、ギクンと肩を揺らす。
悪い予感ほど的中してしまうのは、なぜだろう。
たしかに、鈴菜が担当した会員の中で今月成婚にこぎつけられたのは、さきほど成婚セレモニーを行った彼女だけだ。
新卒で入った広告代理店を退職し、真由子が経営するビリーブマリッジで働きだしてから三年。
会員をひとりで担当するようになってからは二年が経過している。
成婚数はここ数か月横ばいで、伸び悩んでいる。