この度、俺様パイロットとご成婚しました。
「ふざけないで!」
鈴菜は両手で航輝を運転席へと押し返すと、ほうぼうの体で車から飛び出した。
(信じられない!)
形だけの夫婦だと聞いていたのに、これでは話が違うではないか。
鈴菜は肩を怒らせ、運転席に座る航輝をキッとにらみつける。
「話が違うじゃないですか!結婚は形だけだって言ってたのに!」
「くどかないとは言っていないだろう?」
「なっ!」
「鈴菜が本気でほしくなった。これから覚悟しろよ」
あまりにも自分勝手過ぎる宣言で、鈴菜はただ口をパクパクと開けるしかなかった。
「おやすみ」
航輝は何事もなかったかのように、そう言うと車を動かし走り去っていた。
(噓でしょう?)
形だけの結婚と言われていたし男女の関係はないものだと思って、すっかり安心しきっていた。
買ってもらった結婚指輪がずしりと重たく感じる。
けれど今さらやめるとは言えない。
結婚へのカウントダウンはすでに始まっていた。