この度、俺様パイロットとご成婚しました。

「本物じゃん……」
「偽物に見えるか?」
「いや、お前が偽物を掴まされるはずがないんだけど。ってそういう意味じゃねーよ!」

 お得意の軽快なトークでツッコミを入れる黒崎とは、長い付き合いだ。

 同じ小学校からの持ち上がりで、なんと大学まで一緒だ。なんの因果か、いまもこうして同じ会社でパイロットとして働いている。

「結婚したくないって言ってなかった?」
「そうだな。したくはなかったが、やむを得ない事情があってな」
「ああ。また例の母親の件でなにかあったのか?」
「察しがいいな」

 先日の出来事を思い出した航輝はふうっと息を吐いた。

 母親が見合いをセッティングした日は、ちょうどスタンバイの日だった。

 スタンバイとは、悪天候によるスケジュールの乱れやパイロットの体調不良などの不測の事態に備え、あらかじめ所定の時間までバックアップ要員のパイロットを待機させておくことだ。

 呼び出しがあればただちに空港に向かい、そのまま通常通りの業務を行うが、呼び出しがなければ普通の休暇だ。

 航輝も呼び出しに備え、自宅で待機していたわけだが。

『近くまで来ているから、お茶でもしない?』

 母から連絡が来たのは、スタンバイ終了時刻まで残すところ三十分というときだ。
 すぐに電話を取れる状況なら、近所への外出は問題ない。

 たまには親孝行でもするかと思ったのがそもそもの間違いだった。
 待ち合わせ場所の中華ダイニングで待っていたのは、母親ひとりではなかった。
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