この度、俺様パイロットとご成婚しました。
『はじめましてっ!』
『こちら私の友人の娘さんよ』
頬を赤らめて母のとなりに立っていたのは、名のある名家のご令嬢というやつで。
(はめられた)
そう思ったのも束の間、顔に出してしまっては母の面子を潰すことになる。
本当なら踵を返して、自宅に戻りたかったが、すんでのところで踏みとどまり、席に着いた。
楽しくもないおしゃべりに相槌を打っている最中、呼び出しがかかる。
これ幸いとばかりにその場から立ち去り空港にはせ参じたが、仕事のあとスマホを見ると、置いてけぼりにされた母から何件も怒りのメッセージが届いていた。
ニューヨークまでの長距離便をこなしたあとだったので、正直言って勘弁してほしかった。
苦い記憶が蘇り航輝がもう一度息を吐くと、黒崎は腕を組みながらうーんと唸り始めた。
「相手の女性は大変だな。あの頭の固そうなお母さんが姑だろう?」
同じ学校だっただけあって、黒崎は母の人柄をよく知っている。
「彼女なら大丈夫だ」
即答すると黒崎は意外そうに目を丸くした。
たしかに母はひと癖もふた癖もある性格だが、きっと鈴菜ならうまく付き合っていけるだろう。
「まあ、お前がそこまで言うなら本当に大丈夫なんだろうな。なにはともあれ、おめでとう!」
黒崎は激励とばかりに、肩を軽く叩いてきた。
「ああ。ありがとう」
航輝も素直にお礼を言った。