この度、俺様パイロットとご成婚しました。
「ここだ」
「うわあ……!」
業者に荷物を引き渡したあと、航輝の運転する車で彼の住むマンションへ向かったわけだが、鈴菜は部屋の中を見るなり圧倒されてしまった。
メゾネットタイプの低層マンションの一室の一階は大きな窓がある広々としたリビングだ。
二階へと続くアイアン階段は吹き抜けになっていて、開放感を演出するのに一役買っている。
「鈴菜の部屋はここだ」
航輝はそう言って鈴菜を二階の一番奥の一室へといざなった。
扉を開けた先にはシングルサイズのベッドが用意されていて、ホッと胸をなで下ろす。
「一緒に寝ると思ってた?」
図星だと白状せんばかりに、心臓がドキリと弾む。
「一緒に眠りたいのは山々だけど、仕事柄就寝時間が不規則なんでね。寝室は別の方が互いに都合がいいんだ。もちろん、鈴菜が望むなら同じ寝室でもいいけど?」
「ひとりで寝ます!」
色気たっぷりの流し目の誘惑に抗うように、つい語気が強くなる。
「そうか。一緒に寝たくなったらすぐに言ってくれよ?」
航輝がニッと唇を引き上げたそのとき、ピンポーンとインターフォンが鳴った。
「鈴菜の荷物が届いたみたいだな」
軽やかに階段を駆け下りる彼の後ろ姿を見送った鈴菜はそっと息を吐いた。
(本気……なの?)
一時の気の迷いかもしれないと思っていたが、どうやら航輝は本気で鈴菜を口説くつもりらしい。
契約結婚を切り出すくらいだし結婚に夢を見るタイプではないと思っていたが、見当違いらしい。
まるで本物の新婚夫婦のようなやりとりに、鈴菜は大いに戸惑っていた。
(これからどうなるんだろう)
結局、その夜はなかなか眠れず、何度もベッドで寝返りを打ったのだった。