この度、俺様パイロットとご成婚しました。
「ご存じですか?今日乗る飛行機は航輝さんが操縦するそうですよ」
「あら、そうなの」
気を使って話しかけたが、会話は一切弾むことなく、ものの数秒で終了してしまった。
睦美もチャリティーパーティーに参加するわけだが、今からこの様子では先が思いやられる。
(まだ無理よね)
できればチャリティーパーティーが始まる前に、少しは打ち解けておきたいところであるが、難しいのかもしれない。
ぽっと出の鈴菜が、良い家柄のご令嬢を差し置いて、彼と結婚したのをすぐさま受け入れろというのが無理な話だ。
そうしてやや気まずい時間を過ごしていると、搭乗開始のアナウンスが流れ始める。
「お先にどうぞ」
「ええ」
睦美が先に搭乗ゲートを進んでいくのを見送り、鈴菜はソファから立ち上がった。
機内へ移動する途中、それとなくコックピットの様子を窺おうとしたが、西日が強くなってきたせいか、ガラスが反射してうまく見えなかった。
(今頃航輝さんは忙しくしているのかな)
ニューヨークまでは十三時間もかかる長旅だ。準備に余念はないはずだ。
鈴菜はコックピットに座る航輝に思いを馳せつつ機内に足を踏み入れた。
ファーストクラスのシートはコックピットに近い機内前方部にある。
鈴菜の座席は一列目の三席並んだ真ん中の席だ。