この度、俺様パイロットとご成婚しました。
順調に離陸し、シートベルトサインも消えた頃、待望の食事の時間が始まる。
(うわあ!)
よくあるワンプレートではなく、ファーストクラスの食事は有名シェフが監修したコース仕立てだ。
季節の野菜をふんだんに取り入れたサラダや、華やかな前菜、メインの肉料理も絶品で、とても空の上とは思えない味だ。
鈴菜がどれも残さず美味しくいただく一方、となりの座席からは不機嫌そうな声が聞こえてくる。
「食事を下げてもらえるかしら?水だけちょうだい」
食事を取らないなんて、なにかあったのかと思い、座席から立ち上がり通路越しに声を張り上げる。
「大丈夫ですか?どこか体調でも悪いんですか?」
「平気よ」
気丈に振舞ってはいるものの、苦しそうに何度も息を吸っては吐き出しているようだ。
「もし体調が悪いなら、CAを呼びましょうか?」
「……なの」
「え?」
睦美の小さな声は飛行音でかき消されてしまった。
今度こそ聞き逃さないように、鈴菜は身を乗り出した。
「飛行機が……苦手なのよ……。初めて乗ったときに、とても揺れて。ずっと避けてきたのに、あなたたちがチャリティーパーティーに出席するっていうから……」
睦美は消え入りそうなか細い声で懸命に説明した。
ずっと険しい表情をしていると思っていたら、飛行機が苦手だったらしい。