この度、俺様パイロットとご成婚しました。

「これで、ゆっくりできると思いますよ」
「ええ、そうね……」

 ブランケットに包まれた睦美から緊張が解けてきているようだ。

 その様子に安心し、自分のシートに戻ろうとしたそのとき、足もとにコロンとなにかが転がってきた。

「これ、お母さまのですか?」
「私のイヤリング!」

 鈴菜が床から拾い上げたのは素晴らしい照りのある大粒のパールのイヤリングだった。

「着替えたときに落としたのね。よかったわ」
「大事なものなんですか?」
「ええ。結婚してすぐ夫からもらったものよ」
「落としたことにすぐ気づいてよかったです」

 拾ったイヤリングを渡すと睦美はすぐさま大事そうにぎゅっと握りしめた。

「色々とありがとう」
「あ、いや。どういたしまして……」

 お礼を言われるとなんだか拍子抜けしてしまった。

(航輝さんが言った通り、悪い人じゃないみたい)

 とんでもなく不器用なだけで誤解されそうだが、素直にお礼を言えるのなら悪い人ではないのだろう。

 その後、飛行機は揺れることなく順調に航路を進んだ。

 睦美もフラットシートに変えて横になってからは少し調子が戻ってきたようだ。

 もともと乗り心地は抜群のファーストクラスの座席だ。

 すうすうと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくるのに、時間はかからなかった。
< 82 / 132 >

この作品をシェア

pagetop