この度、俺様パイロットとご成婚しました。
日本を飛び立ってから十三時間後。
長かったフライトが終わり入国審査を済ませ、荷物を受け取ると、ようやくニューヨークの地を踏むことができた。
「睦美っ!」
睦美と一緒に到着ロビーに降り立つやいなや、すぐさまスーツ姿の男性が近づいてくる。
「達夫さん、迎えにきてくれたの?」
「ああ。もちろんだよ」
男性はそう答えると、睦美の傍らに立っていた鈴菜の方に顔を向ける。
「君が鈴菜さんかな?はじめまして、航輝の父の達夫です」
「はじめまして!速水鈴菜です」
初めて会う航輝の父親に対し、鈴菜は慌てて頭を下げた。
達夫は彼そっくりの顔立ちでニコリと笑いかけてくれた。
スペードホテルという大きな企業の経営者とは思えないほどの気さくな態度だ。
「早くホテルに行きましょう。車はどこ?」
飛行機を降りた睦美は機内での弱った様子はどこへやら、達夫に向かってぞんざいな態度で言い放つ。
「ああ、こちらだ。ロータリーに車をつけてある」
「そう」
睦美はふうっとため息をつくと、車があるという方向へスーツケースを引いて歩いて行った。
(あれ?)
久しぶりの再会だというのに、あまりにも淡白なやりとりに違和感を覚える。
飛行機の中で、真珠のイヤリングを手にしていた睦美は少女のように頬を染めていたので、てっきり誰もが羨むおしどり夫婦なのかと思っていたのに。
「なにをもたもたしているの!行くわよ、鈴菜さん!」
「はい、今行きます!」
急かされた鈴菜は慌ててスーツケースを押して、睦美を追いかけて行った。