この度、俺様パイロットとご成婚しました。
「いつまでも息子にかまうのはよくないと諭したんだが……。妻はあの通りろくに目も合わせてくれない。私は昔から嫌われているんだよ」
「え?」
「よくある話さ。睦美とは政略結婚でね。由緒正しい家柄の彼女にとって、私のような成り上がり者の妻になるのは我慢ならなかったのかもしれない」
達夫は自虐的に語っているが、鈴菜には本当に睦美が達夫を嫌っているようには思えなかった。
目を合わせなかったのは、苦手な飛行機の中に十時間以上も閉じ込められていたからだろう。
達夫の前では疲れ切っている姿を見せたくないと強がっていたにすぎない。
睦美の心中を代弁しようと鈴菜が口を開いたその瞬間、達夫がすっと右手を差し出してくる。
「改めて結婚おめでとう。航輝が選んだ人なら間違いないだろう」
「ありがとうございます」
鈴菜はお礼を言いながら握手を交わした。
「君の部屋まで案内しよう」
達夫は鈴菜のスーツケースを手ずから運び、用意された部屋までエスコートしてくれた。
「ニューヨーク滞在を楽しんで」
スーツケースを客室の中まで運び入れてもらい達夫が立ち去ると、約十五時間ぶりにひとりになり、ようやくひと息つける。