この度、俺様パイロットとご成婚しました。
優雅な音楽に包まれながらふたりだけの世界に浸っていると、ふと視界の端に睦美と達夫が映る。
ふたりは席についたまま微動だにせず、ダンスに興じている人たちを遠巻きに見つめるばかりで参加しようとしない。
「お母さまとお父さまって、いつもあんな感じなんですか?」
「あんな様子とは?」
ふたりの様子が気になった鈴菜は機内で交わした睦美のイヤリングの話と、その後空港で達夫と会ったときの様子について話した。
「ああ、そういうことか」
話し終えると航輝は納得したようだ。
「両親は昔からそんな様子なんだ。俺も話をしたことがあるんだが、どうにもうまく誤解が解けなかった。ボタンの掛け違いが長く続いていて、お互いにどうしたらいいかわかっていないんだ」
「そうですか……」
長い年月をかけて積み重なったものだから、ひとつひとつ取り除くのは大変な作業なのかもしれない。
それでもあのふたりが笑って過ごせる未来があればいいのにと願わずにはいられない。
夢のような時間はあっという間に終わりを告げ、やがて音楽がやむと、鈴菜と航輝はテーブルへ戻った。
「いいダンスだった」
「ありがとうございます」
達夫はふたりに拍手を贈ってくれたが、睦美は無言でシャンパングラスを傾けていた。
本当は彼女もダンスを踊りたかったのかもしれない。