この度、俺様パイロットとご成婚しました。

 ◇

(さすがに早かったかな)

 ニューヨーク滞在三日目の朝。
 今日は航輝と待ち合わせして、ニューヨークの街に遊びに行く予定だ。

 チャリティーパーティーへの出席というイベントが終わった安堵感から、昨夜はぐっすり寝られた。

 元気をチャージした鈴菜は、待ち合わせの時間まで客室にいるのもつまらないと思い、早めにロビーまで下りてきてしまった。

 大きな柱に背中を預け、美しいアンティークの調度品を眺めているだけでため息が出そうになる。

 スペードホテルのロビーは朝から忙しなく大勢の人が行きかっている。

 ニューヨークという立地もあるだろうが、宿泊客の中には家族連れやビジネスマン風の男性もいる。
 スペードホテルが様々な年齢層に愛されるホテルなのは、達夫の手腕によるものだろう。

(あっ!)

 噂をすると、達夫本人が入口の回転扉をくぐりロビーに現れた。

 達夫も鈴菜がいることに気づき、片手をあげながらこちらへやって来る。

「鈴菜さん、今から出かけるのかい?」
「はい。航輝さんと待ち合わせをしているんです。お父さまはこれからお母さまのところに行かれるんですか?」
「ああ。睦美が日本に帰る前に顔を見ておこうかと思って」

 忙しい時間の合間を縫ってはるばる異国へやって来た妻との時間を大切にしようとするなんて、模範的な夫の行動である。

 少なくとも達夫は、睦美を大事に思っているようだ。
 けれど、このまま報われない状態が続けば、いつ睦美に愛想をつかしてもおかしくない。
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